内分泌内科とは

内分泌内科のイメージ写真

内分泌内科とは、主に甲状腺、副甲状腺、下垂体、副腎、膵臓、生殖腺などの内分泌系に関わる臓器の疾患を専門とした診療科です。内分泌系とはホルモンを分泌することで、全身の様々な機能を調節し、体の内外で環境の変化が生じても、体の働きが常に同じような状態であること(体内の恒常性)を保つという重要な役割を担っています。

分泌されるホルモンは、多過ぎても少な過ぎても、体内の恒常性が損なわれるため、分量が精密に調節されています。これが乱れると様々な症状・疾患が引き起こされます。高血圧症・糖尿病・脂質異常症や肥満症などの生活習慣病の中には、内分泌疾患が隠れていることも少なくありません。

以下のような症状がある場合、内分泌内科をご受診ください

疲労感や倦怠感

甲状腺の異常(バセドウ病、甲状腺機能低下症など)が原因の可能性があります。

  • 極端な疲れやすさ
  • 活動性の低下
  • 寒がりまたは暑がり

体重の急激な変化

ホルモンバランスの乱れが考えられます。

  • 食事量が変わらないのに体重が増えるまたは減る
  • 顔がむくむ(クッシング病(症候群)の可能性があります)

のどの異常や腫れ

甲状腺疾患に関連する症状です。

  • 首の腫れやしこり
  • 嚥下困難

生理不順や不妊

女性ホルモンやプロラクチン異常が疑われます。

  • 生理の周期が不規則
  • 生理が止まる(無月経)

血糖値の異常

糖尿病の初期症状または合併症の可能性があります。

  • 喉が異常に渇く
  • 尿の量が増える
  • 目のかすみや疲れ

高血圧や低血圧がコントロールできない

副腎の疾患(アルドステロン症、フェオクロモサイトーマなど)の可能性があります。

異常な発汗や心拍数の変化

自律神経の乱れや甲状腺機能の異常が原因の場合があります。

  • 手の震え
  • 動悸

身長や成長の異常

お子様の場合、成長ホルモンの分泌不全が疑われることがあります。

  • 身長が周囲より著しく低い
  • 骨の成長が遅い

骨の脆弱性や骨折しやすさ

副甲状腺ホルモンの異常やカルシウム代謝異常が関与する可能性があります。

  • 骨粗しょう症が進行している
  • 軽い衝撃で骨折する

特異な外見の変化

先端巨大症(成長ホルモン過剰分泌)やクッシング症候群の可能性があります。

  • 手足や顔が大きくなる
  • 筋力低下

その他の症状

  • 喉の渇きと大量の尿(中枢性尿崩症の可能性があります)
  • 性欲の低下(ホルモンバランス異常)

当院では糖尿病に関しては糖尿病内科、甲状腺疾患に関しては甲状腺内科として診療を行い、それ以外の内分泌系の疾患に関しては、内分泌内科として診療を行います。

内分泌内科で診療を行う主な疾患には以下のようなものがあります

下垂体疾患
先端巨大症、クッシング病、プロラクチノーマ、下垂体前葉機能低下症、中枢性尿崩症など
副腎疾患
原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫、慢性副腎皮質機能低下症(アジソン病)など
副甲状腺疾患
副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症など
膵・消化管神経
内分泌腫瘍
インスリノーマ(インスリンを過剰に分泌する腫瘍で低血糖を引き起こす)など
生殖腺疾患
生殖腺など機能低下症

下垂体疾患

下垂体は、脳の中心部付近にある小さな組織です。しかし、その果たす役割は大きく、成長ホルモンのほか、「様々なホルモンを調節するホルモンを分泌する」という司令塔といってもいいでしょう。司っているのは甲状腺・副腎・性腺などで、前葉からは、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン)が、後葉からオキシトシンと抗利尿ホルモンが分泌されています。下垂体に問題が起きると、これらのホルモン分泌が異常となり、様々な疾患が発症してしまいます。

先端肥大症

良性の腫瘍が下垂体の前葉部に発生する「下垂体線種」によって、成長ホルモンが過剰に分泌されることが発症の原因です。主な症状は、手足が大きくなる、下あごが出る、鼻や唇、舌などが大きくなるといった顔つきの変化のほか、多量の発汗、疲れやすい、視力の低下、視野障害などが現れることもあります。

クッシング病

下垂体線種が原因で副腎皮質刺激ホルモンが過剰に分泌し、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることで発症する病気です。主な症状としては、満月のような真ん丸顔、中心性肥満、腹部などに赤色皮膚線条、にきび、多毛、皮膚の菲薄化、高血糖、高血圧などがあげられます。副腎の皮質の細胞に発生した腫瘍などにより発症するものは「クッシング症候群」と呼ばれます。

下垂体前葉機能低下症

下垂体線種などの腫瘍や下垂体の炎症、頭部の外傷、シーハン病などによって下垂体の前葉から分泌される4種類のホルモンが低下することで発症する疾患です。どのホルモンが不足しているかで症状は異なります。全般的に低下した場合、全身の倦怠感、食欲不振、低血圧、低血糖、筋力や筋肉量の低下、無月経、性欲低下、体脂肪の増加、寒がりになる、皮膚の乾燥、便秘、体のむくみ、などがみられるようになります。

中枢性尿崩症

下垂体の腫瘍や外傷、炎症、遺伝的要因などによって、下垂体後葉から分泌されている抗利尿ホルモン(バソプレシン)が低下することによって起こる病気です。このホルモンは腎臓に働きかけ、尿を濃縮する働きがあるため、不足すると尿量が多くなり、脱水症状となって、喉が渇く、大量に水を飲むなどの症状が現れます。

副腎疾患

副腎は左右の腎臓の上にあり、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモンによって、生命維持に必要なホルモンの分泌を行う内分泌器官です。分泌されるホルモンとしては、副腎皮質からはアルドステロン、コルチゾール、アンドロゲンといったステロイドホルモンが、副腎髄質からはカテコールアミン(アドレナリン、ノンアドレナリン)などがあり、これらの分泌異常が起こると、様々な症状があらわれます。

クッシング症候群

副腎の皮質の細胞に発生した腫瘍などにより、コルチゾールという副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることにより発症するのがクッシング症候群です。ちなみに下垂体の腫瘍が原因でコルチゾールが過剰に分泌して起こる場合は「クッシング病」と呼ばれ、症状はほぼ同じです。また、ほかの病気で使用していたステロイドの長期使用によってコルチゾールが過剰に分泌することもあり、この場合、医原性クッシング症候群と呼ばれます。

原発性アルドステロン症

副腎皮質からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌することにより発症する病気です。原因は副腎に生じた腫瘍、もしくは副腎全体が肥大する過形成によるとされています。主な症状は高血圧を引き起こすことです。アルドステロンは腎臓に働きかけ、ナトリウムを吸収、カリウムを排泄するホルモンで、このホルモンが過剰になると、塩分(ナトリウム)が溜まり、低カリウム血症となって、血流が増加。血圧が上がります。二次性高血圧の原因のひとつと言われています。

褐色細胞腫

褐色細胞腫とは、副腎髄質、傍神経節細胞に発生する腫瘍で、カテコールアミンというホルモンの過度の分泌を引き起こします。カテコールアミンとはアドレナリン・ノルアドレナリン、ドパミンなどのことで、これらが過剰になると血管が必要以上に収縮するほか、交感神経が過剰に興奮することにより、高血圧や動悸、めまい、頭痛、発汗過多、代謝亢進、血糖の上昇などの症状がみられるようになります。そのほかにも、痩せ、便秘、胸痛、視力障害などが起こることもあり、放置していると糖尿病や不整脈に至ることもあります。

慢性副腎皮質機能低下症(アジソン病)

副腎の機能が低下し、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の分泌が不足する病気です。先天的なものと後天的なものがあり、後天的なものがアジソン病と呼ばれます。後天的なものの原因としては感染症(結核、真菌など)や自己免疫疾患による副腎の炎症などが考えられており、腫瘍(がんの転移や原発性副腎悪性リンパ腫)や後天性免疫不全症候群(エイズ)の合併症として発症する場合もあります。主な症状は、体重減少、低血糖、精神症状(うつ、不安等)、全身の倦怠感、吐き気・嘔吐、低血圧などで、このほかにも、顔、歯茎、舌、手指などに色素沈着がみられることもあります。

副甲状腺疾患

「副」甲状腺というと、甲状腺を補完する働きをすると考えられがちですが、まったく別の働きを持っています。副甲状腺は米粒ほどの大きさで甲状腺の真後ろ、上下左右4つの場所に位置しています。ここから副甲状腺ホルモンが分泌されますが、その役割は体内の骨や腎臓に作用し、カルシウムの代謝に関係して、血液中のカルシウムのバランスの調整を行っていると考えられています。副甲状腺に関係して発症する疾患としては、「副甲状腺機能亢進症」と「副甲状腺機能低下症」があります。

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺に何かしらの原因によって腫れて副甲状腺ホルモンの分泌が増え、それにより主に血液中のカルシウム濃度が上昇してしまう状態です。原因としては腺腫、がん、過形成、慢性腎不全、ビタミンD欠乏症などが考えられています。これにより、高カルシウム血症や骨密度の低下、胃潰瘍、尿路結石などが発症しやすくなってしまいます。初期には無症状ですが、疲れやすくなる、注意力が散漫になる、イライラするといった症状や、のどの渇き、多飲・多尿、吐き気・嘔吐、食欲低下、筋力低下といった症状がみられるようになります。さらに膵炎や血圧上昇、意識障害を招く危険もあります。

副甲状腺機能低下症

副甲状腺機能低下症は、副甲状腺ホルモンの産生量が低下している状態のことで、それにより主に血液中のカルシウムが低くなることで様々な症状が現れる状態です。原因としてはがんなどの甲状腺疾患での摘出手術に伴うもの、自己免疫疾患による副甲状腺の細胞の破壊、形成不全といったものが挙げられます。症状としては、手足や口回りの筋肉に特徴的な痙攣(テタニー)がみられます。また手足や腹部、口回りの筋肉の痛みやつったような感覚が生じる場合もあります。さらに疲れやすさや脱毛、皮膚の乾燥、爪や歯の生育障害、重い生理痛、気分の落ち込みなどの症状があらわれる場合もあります。